腐った牛乳

冷蔵庫のドアポケットに
いつもある牛乳


watashiもottoも
コーヒーには欠かせない牛乳


それが近頃
watashiのコーヒーはブラックになった


牛乳いれなくなった


そして
娘Bがアメリカに旅立って
そろそろ一カ月
彼女は牛乳を飲む子だった
甘いおやつと牛乳
グラノーラに牛乳


だから減らない牛乳


グラタンやクリームシチューも
しなくなった
なので減らない牛乳


ottoがカフェオレするときだけ
牛乳の出番


watashiのカフェオレは
熱いコーヒーに冷たい牛乳を
平気で入れる
ottoは自分で淹れるときは
牛乳をキチンとレンジで温める




ある日ottoが
レンジから出した牛乳が
ヨーグルトになってた
と言った


ーそんな訳ないでしょ


ーで、どうしたん？


ーほった


腐ってたんやろな


腐った牛乳なんて
35年ぶり
watashiが小さい頃は
たまに牛乳が腐ってた


冷蔵庫の性能なのか
牛乳のパック詰め作業の精度なのか
それともただ使わなくて古くなるのか
わからない


腐ってるか腐ってないか
母はいつもwatashiに匂わせた
なんでwatashi？
watashiには姉も兄もいたのに
母はいう
ーだってあなたは鼻がいいから
ホンマかどうかわからないけど
褒められて嬉しくて
冷蔵庫の前の母に呼ばれると
とんでってすすんで匂った
母の役に立てるのなら


ーこれ大丈夫？腐ってない？
ー大丈夫！！


たまーに、
ごくたまーに、
ーっっうっ…ダメ！あかん！


ギャーギャー言うwatashiをよそに
笑いながら
慌てて牛乳をとりあげる母の横顔
今の私よりずっと若かった母


腐った牛乳なんて
昭和のものだと思ってたのに
今の時代に出会ってしまった


お陰で
若かりし母の横顔を思った


腐った牛乳
やるやん